森の奥にビスケットでできたお家がありました。
煙突から綿菓子のような白い煙がもわもわ出ています。
そのお家の中からでしょうか、きれいな音楽が聞こえてきました。
右腕に王冠を抱え、左手に苺ケーキを持ったマリーは、そのお家の扉をノックするために、近くに積み上げられた薪の山の上に王冠と苺ケーキそっと置きました。
そして、服を軽く整えてから扉をノックしました。
「どうぞ。開いてるよ。どなたかな。」
「はじめまして。わたしマリーです。」
「おお、おお、お菓子が大好きなマリーじゃな。よく来たね。さあ、お入り。」
ビスケットのお家に住む白いヒゲのそのおじいさんは、お菓子の国のサンタクロースだったのです。
「おじいさんは、世界中に配るクリスマスプレゼントを用意してるところだったのね!」
しかしマリーが部屋の中をよく見廻してみると、たくさんの空き箱ばかりでプレゼントがどこにも見あたらないのです。そしてサンタクロースは何か目には見えないものを大切につかむようなしぐさで箱に詰める動作をしているだけでした。
「何を詰めているの? 何も見えないみたいだけど。」
「音楽じゃよ。」
マリーは不思議そうに目を大きくしました。
「わしのプレゼントは音楽なんじゃ。こんな寒い日には音楽が一番。音楽は暖炉の灯よりもあったかいものじゃよ。」
サンタクロースは赤いリボンでくくられた箱をマリーに手渡しました。
「わたしに!?」
サンタはうなずいて微笑みました。
マリーは目をきらきらさせながらリボンをほどき、箱を開けました。
すると箱の中から美しい弦楽四重奏が聞こえてきたのです。
心がぽかぽかしてきて、気のせいか、からだまで温かくなった気がしました。
「どうもありがとう!」
マリーはおじぎをしてサンタクロースのお家から出ました。
薪の山の上に置いた苺ケーキのお皿と、王冠を手に取りました。
するとどうでしょう。
一番上に積み上げられていた薪が、王冠の魔法でおいしそうなロールケーキに変わっていたのです。
マリーは素敵な音楽とおいしそうなブッシュ・ド・ノエルをクリスマスプレゼントにもらったのでした。
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