雨が降ってきました。
マリーは大きなポプラの葉っぱの下で雨宿りすることにしました。
葉っぱの下ではもう、小鹿と子羊が雨宿りしていました。
「せっかく楽しく遊んでいたのにね、子羊くん。」
「そうだね、せっかく楽しく遊んでいたのにね、小鹿くん。」
小鹿と子羊は、雨宿りに加わったマリーに、そろってお辞儀をすると、マリーが持っている苺ケーキに目をやりました。
マリーは、
「このケーキはね、プリンセス・ティアレに持っていくために、わたしが自分で作ったのよ。」
と誇らしげに言いました。
「・・・その白いきれいなものはなに?」
小鹿と子羊が声をそろえてたずねました。
「これはね、粉雪よ。砂糖を振りかけて飾ったの。」
「雪・・・」
小鹿と子羊は顔を見合わせました。
「・・・雪の結晶さん、どうしているかな。」
小鹿がつぶやきました。
「そうだね・・・春が来て雪が消えてから僕たち・・・二人だけで遊ぶようになって、雪の結晶さんのことすっかり忘れてしまっていたね。」
子羊が寂しそうにつぶやきました。
二人の会話を聞いていたマリーは、静かに降る雨を見て、
「これはもしかしたら雪の結晶さんの涙なのかもしれないわ。」
と言いました。
「雪の結晶さん、ごめんなさい。」
子羊が、いてもたってもいられない気持ちになって言いました。
「雪の結晶さん、また冬がきたら一緒に遊ぼうね。」
小鹿も、空に向かって叫びました。
二人の声が、お友達に届いたのかもしれません。
雨はやみ、空にはきれいな虹がかかったのです。